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1949年創業の伝統をいまに。

ヴィンテージの椅子やソファがデンマークから届く度に気になっていた生地がある。人や木と共に、時の流れがもたらす生地の風合いはよく家具に馴染んでいて、独特の色味はその土地で暮らす人々の優しさが感じられるよう。記録を辿れば、そのファブリックメーカーはダニッシュアートウィーヴィング社(以下、DAW)という。

60年以上前、デンマークの北にあるブレナスレウという街で創業。今ではその影を潜めているが、デンマークはかつて酪農が大きな産業だった。乳製品をつくるだけでなく、刈り取った羊毛から作られる織物は近隣諸国で高い評価を得ていたそう。他国から安易に資源を買い集めることなく、自分たちの持つ豊富な自然を活かすことを大切にしていたのでしょう。しかも当時は第二次世界大戦が終わり、多くの産業が息を吹き返した時代。家具も例外なく需要が高まり、同時にファブリックメーカーも多く誕生し競い合っていた。

DAWが提供するのは、創業者が趣味で収集していたデンマークの伝統的な織物オルマデゥグを元に考案したもの。オルマダグは長く厳しい冬の間、各家庭で手織りされ、僅かに起毛した肌触りにストライプ柄が特徴の生地。その為、シンプルな柄の中に確かな個性がある。DAWでは糸から丁寧に染色し、手で一つずつ織り上げることで模様を表現している。

そんな努力を続ける彼らの元に意外な人物からの仕事が舞い降りた。デンマーク国王女が張替の注文に訪れたのだ。それは彼らにとってまさに青天の霹靂。このことはメディアに取り上げられ多くの人に認知されたことで、国内各地のショップで取り扱いがスタート。アルネ・ヤコブセンやハンス・J・ウェグナー、フィン・ユールなどの著名なデザイナーが、自身の手掛けた家具にDAWを採用するほど確固たる地位を築き上げた。その後、好調に実績を伸ばしてファブリック業界をリードするものの、1980年代になると家具業界は失速。DAWもその波に押され、経営陣が転々とするなど苦境に立たされることに。

現DAWの代表を務めるカートはこう言う「この伝統を意地でも守り抜く」と。現代のデンマークではKvadratという世界的なファブリックブランドが存在し、先進的でモダンなブランディングを展開。一方でカートが導き出した手段は“変わらないこと”だった。1949年創業という誇りと伝統をいまに伝えるべく、当時のラインナップを大切に提案し続けている。

ストライプ柄の他、ワントーンの生地も素晴らしく、ヤコブセンの代表的な建築SASロイヤルホテルのスウィートで採用されるのはROYALというワントーン。製造こそ手織りから機械化されるも、それはより高い品質管理を徹底する手段。ウールや織り方は何も変わっていない。だからヴィンテージソファやチェアとの相性がよく、独特な雰囲気をもった生地はどこか懐かしさを感じ、心からあたたかな気持ちにさせてくれる。北の大地にどこまでも広がる草原の真ん中で、粛々と、これからも。



記者:中島

FEATURE

JOURNAL on 2nd JULY 2017

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