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JOURNAL / FROM HIKE / FURNITURE HISTORY / CHAIR-J39 BY BORGE MOGENSEN



ボーエ・モーエンセンが1947年に発表したダイニングチェア「J39」。70年以上も作り続けられているベストセラー。

時代は第二次大戦後、デンマークの首都であるコペンハーゲンには各地から職を求めて国民が殺到し、急激に増える人口に伴い物資はもちろん住む場所が不足し物価、家賃は高騰する事に。豊かな暮らしを求めて訪れたはずの移住者はより貧しく険しい生活を強いられた。

その状況を目の当たりにしたデンマーク政府は国民の生活の立て直しをはかり、FDB(デンマーク生活協同組合連合会)を通じてさまざまな復興プロジェクトを立ち上げた。まずは、「生活必需品の生産」を重要な課題と捉えコーア・クリントを有する王立芸術アカデミーに協力を依頼し家具部門を設立、この部門をFDBモブラーと名付けコーア・クリントの愛弟子であったボーエ・モーエンセンを1942年初代代表として迎えた。

就任したモーエンセンに課せられた使命は、「加工が単純で安価、美しい意匠で座り心地が良く尚且つ丈夫な椅子をデザインする事」となんとも過酷な条件だった。試行錯誤を重ねモーエンセンが行きついたのが、アメリカに住むキリスト教の一派であるシェーカー教徒の生活様式。

シェーカー教徒は独特の厳しい戒律のもと、世俗と距離を置いた自給自足の質素な生活を営んでおり、彼らの使用する家具は無駄な装飾が一切なく簡素で機能的なものだった。それはモーエンセンが目指した質が高く、堅実であるという条件を見事に満たすものであり難題をクリアする為の大きな手掛かりとなった。

そして5年の歳月を経て1947年に発表されたのが「J39」別名シェーカーチェア。丸棒だけを組み合わせた単純で丈夫なフレーム、緩やかなカーブを持つ幅広の背板、古くから地中海地方の農家で見られた藻紐編みの座面(後にペーパーコードに変更)、シェーカー家具がそうであるように出来るだけ材料を節約し、無駄な行程を排し丈夫な構造を備え余分なものを削ぎ落としたデザインとなった。当時の販売価格も1脚5000円程度と低価格を実現し、デンマーク国民の生活の立て直しに一役買った椅子”People's chair”(庶民の為の椅子)として賞賛され世界的に有名な椅子となった。

厳しい時代背景の中で無理難題に立ち向かったモーエンセンの情熱が詰まったまさに名作家具。

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記者:谷山


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FROM HIKE

JOURNAL ON 23RD JULY 2018

FURNITURE STORY VOL 002
CHAIR-J39 BORGE MOGENSEN