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デンマークから隣国スウェーデンに海を渡ってやってきた。そうここはスウェーデンの英雄、世界的に有名なサッカー選手・イブラヒモビッチが生まれた国。さらに僕がコレクションしているエリック・ホグランの作品が誕生した国でもある。もうひとつ付け加えるなら、大好きな車メーカー、ボルボがある国。ちなみに社長もスタッフの谷山君も乗っている。スポーツ、クラフト、重工業と好きなスウェーデンが僕の中で混在しているが、どうしてスウェーデン絡みが多いのか、この旅を通じして知ることができれば嬉しい。

「ガムラ・スタン」
スウェーデン語で”古い街”を意味するストックホルム旧市街。 王宮、ノーベル博物館、ストックホルム大聖堂、リッダーホルメン教会など中世の面影を色濃く残す一方で、 赤、黄色、オレンジといったカラフルな建物が密接し、レトロな雑貨屋、パブ風のレストランなどが軒を連ねる。 中心地にあるストールトリエット広場は、憩いの場となっている様でギター片手に弾き語りする人、大胆に昼寝する人など、皆自由気ままに過ごしていた。 この穏やかでで美しい場所は宮崎駿監督映画「魔女の宅急便」のモデルとなった街としても有名で、網の目のように張り巡らされた石畳の細い路地、 香ばしい匂り漂うパン屋さん、エンディングシーンの時計台、キキが箒で飛んでいた風景と作品と照らし合わせるように歩き楽しんだ。

「ヴィンテージショップ」
ストックホルム市内には素敵なヴィンテージショップが多く点在する。中でも「モダニティー」と「ジャクソンズ」は扱っているアイテムの豊富さ、ディスプレイの質の高さが郡を抜く。ヨーロッパ様式の高い天井と広い空間には、ヴィンテージ家具が贅沢にディスプレイされ、まるで美術館の様。イブ・コフォド・ラーセンのエリザベスチェア、色艶を増した革張りのヤコブセンのチェア、羊毛張りのウェグナーのイージーチェアなどクオリティの高い品々が並ぶ。 家具の他にも、大好きなエリックホグランのミラーや、日本ではなかなか目にする事のない珍しいアート作品が壁一面に展示され終始、興奮気味だった。

「ソーフォー」
セーデルマルム島の中央にあるおしゃれな若者が集まるエリア。日本でも人気のファッションブランドやライフスタイルショップをはじめ、アートギャラリー、デザイン書籍を扱うブックストア、天然酵母パンで人気のカフェなど魅力的なお店が立ち並ぶ。なかでも、1940年代のレトロなスタイルで一躍街の顔となったキャラメルのお店「パーランス・コンフェクティール」は有名。少しばかり旅疲れた僕にそのキャラメルはとても美味しく感じられた。それにしても歩く人、店員さんもみなスタイリッシュ。スウェーデンカルチャーの発信地というのが頷ける。

「ウルフスンダ・スロットホテル」
ストックホルムから電車で9駅、ウルフスンダにやってきた。駅から15分歩くと今日の目的地、17世紀の古城、ホテルウルフスンダ・スロットホテルに到着。目の前にはスウェーデンで3番目の大きさを誇るメーラレン湖が佇む。ホテルはモダン家具でコーディネートされ、古いお城とのバランス感が絶妙だ。庭先のテントビラで宿泊客が心地良さそうにワインを嗜んでいる。僕もワインをいただくも、ストックホルムから少し距離があったのと旅の疲れからか部屋のベッドに横になるなり、そのまま爆睡してしまった。翌朝、ビュッフェスタイルの朝食で頂いたパン、チーズ、生ハム、ヨーグルトは食材の味がしっかりしていて美味しい。野菜はすべて自家農園とか。ホテルを背伸びした分、夜食は節約していたから、このような朝食は嬉しくてたまらない。湖面を伝わるさやかな風を感じつつ、四つ星ホテルでゆっくりとした時間を過ごした。

港町であるストックホルムはいつでも広い海と空を望め、歩き疲れた時はこの景色が僕を癒してくれた。決して大きくない街はヒューマンスケールの観点から見てもとても暮らしやすそうだ。少し郊外に出れば緑と湖が出迎えてくれ、静寂さも隣接するこのストックホルムの街が大好きになった。市内はタウンごとに個性豊かでローカル感漂う人々の長閑な暮らしが見え隠れしている。特に印象的だったのが街のあらゆる所に、ベビーカーや車椅子用のエレベーターやスロープが設置されており、ベビーカーを押している人を見れば必ず車が停車する。その優しさは人だけではなく犬にも向けられ、電車、バス、デパートの中など基本的にはどこでも一緒に利用することが出来る。ただし、それは公共の場でもしつけがしっかりとできていることが大前提。人も犬もお互いにリスペクトし合うには当然のごとく成熟があってこそ。

福祉国家の先進国ともあり、どこか人々もおおらかでゆとりのある感じが街全体に漂っていた。フォーマットが整えられた日本からしてみるとそのゆとりと自由さは羨ましく感じられた。イブラヒモビッチは天真爛漫にピッチを駆け巡り、エリック・ホグランはその自由な作品ゆえ異端児扱いされ、ボルボは一貫して安全性と流行に左右されないデザインは人に優しく、そうきっと僕は彼らからそんな自由さと芯の強さを 感じていたのかもしれない。

旅は自分の感受性を高めるには最高です。特に一人旅は新たな自分と対峙することも多く、もっとこんな機会を積極的に設けていこうと思うのでした。動いた分だけ世界が広がってゆく喜び。これは何事にも変えがたい。



文&写真:宮下(アトリエスタッフ)



前編・デンマークはこちら

FROM HIKE

2016.11.07

メンテナンスのスペシャリスト 宮下君
はじめての北欧へ 後編 スウェーデン