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JOURNAL

北海道の道北内陸に位置する上川郡東川町。街の中心地を貫く道の数キロ先には道内で一番高い山(旭岳)がそびえ立つ。厳冬期の晴天率10%以下、気温はマイナス20度と、風向きによってはホワイトアウトも日常的だ。この厳しい環境の中で、僕の友人がショップ(LESS)を営んでいる。いったい彼(浜辺さん)がどのように冬と向き合っているのか、”冬”にまつわるインタビューを行った。

須摩:
お店のご紹介をお願いします。
浜辺:
レスは衣食住のうちの"衣"を中心としたお店ですが、着るもの、食べる物、住まいのもの、それらの断片的なモノを売るというよりは、モノを通して生活の中の一部を売っているお店として捉えてもらえれば。
須摩:
店名であるレスの由来は?
浜辺:
ドイツ人建築家ミース・ファンデル・ローエの言葉、LESS IS MORE からとっています。少ないことはより豊かというところで、大事なものを見極め、自分にとって何が大切か考えチョイスする。それはきっと作る側の思考や暮らし方がモノにも反映されるのではないかと思っていて、レスに来店されたお客様がそれを感じ取ってもらえたら嬉しいなと。
須摩:
東川はいいところですか?
浜辺:
歩いているとそれぞれの季節の匂いが感じられる。それって他の場所ではあまりないことなのではと最近つくづく思います。確実な四季が必ず巡ってくる。それが日々の暮らしのベースとなり、季節に寄り添うように生きている。そんな当たり前の日常の中に、自然と人の豊かさが感じられる。東川の最大の良さはそんなところかなぁ。それも年を重ねてから感じられるようになったんですけどね。
須摩:
冬は好きですか?
浜辺:
はい、ほぼ冬なので。好きにならないと暮らしていけません(笑)。短い夏が終わり、秋が駆け脚で走り去り、雪虫が飛び始める11月から冬の季節がはじまって、麓の雪がなくなる春までの約半年間が冬。雪山が好きな友達と一緒にフィールドで遊べるのも好きな理由のひとつ。雪が降った時のパウダースノーはやめられません(笑)。それはもう最高です。本来なら2月は一番寒い時季なのに、今日は0℃と暖かく「もうじき春だね」なんて数ヶ月先の季節に思いを馳せるのも冬が厳しいからこそ。けど厳しいからこそ美しい景色もいっぱいあるのも冬ならではです。
須摩:
冬の日常生活の中で美しいと思える瞬間は?
浜辺:
それはもう圧倒的に外の景色。場所はその辺です(笑)。時間帯によって全然違うけど、やっぱり朝一ですかね。澄み切った大気を突き抜けてくる光線の輝き、少しフィルターがかかっているような霞んだ朝も素晴らしいです。それが刻々と変化してゆく様は見とれてしまいます。アッと思ってカメラを構えた瞬間にもう終わってたり。一瞬の儚さ、尊さが目の前で繰り広げられています。
須摩:
冬ならではの好きな食べ物?
浜辺:
それはシカ肉。11月から2月の季節限定ですが、生肉で食べれるのはその期間だけです。山や森が近く、父がハンターというのも大きいかもしれません。採った獲物(駆除)を父がナイフ一本で裁き、数日内に食べる生肉は格別です。舌触りは滑らかで臭みは一切ありません。それが胃の中に落ちたとき、僕はこの山と森と同化できたような気分になり、体が少し熱くなります。冬を生きるためのエネルギー源です。
須摩:
冬の匂いってどんな匂い?
浜辺:
季節の変わり目になると巡ってきた季節の匂いがよくわかります。冬の匂いも幾つかあって、そうだなぁ一番わかり易い表現だと、冷たい空気を吸い込んでキーンとなった時の匂い。それが実際に匂っているかどうかわからないのですが、鼻の粘膜が冷たくなることで、結果的に冬の匂いとして捉えているのかもしれません。
須摩:
冬の幼少期の思い出は?
浜辺:
ひとつは父親の股の間に挟まってスキーをしたこと。それは旭岳(道内一番大きな山)で、ちょっと怖かったから記憶に残っているのかなぁ。三女の父親になった今ではあの頃と同じように親子でスキーを楽しんでいます。日常的には、氷柱舐めながら帰宅したり、手足べちゃべちゃになるまで外で遊び、家の中はポッカポカで、その温度差でソファに横になってそのまま眠りに落ちるパターン。あれは幸せだったなぁ。
須摩:
冬の東川で一番好きな場所は?
浜辺:
家の中(笑)。それと、旭岳の雪景色。雪が降って翌日が晴れた日はそれはもう最高です。冬の間、滅多にその姿を望むことができない旭岳ですが、麓からでもドーンと見えた日は、1日気分がいいですね。それと、これは日常的すぎてどうなのかなぁと思うのですが、早朝と夕方は街の中に居ながらもすごくドラマチックな光景が見れます。空がオレンジ色に染まった時の美しさは荘厳です。
須摩:
冬何をしている時が満たされますか?
浜辺:
そうですね、強いて言えば、夏よりも映画を良くみています。暗くなるのも早く、部屋の中は暖かく、篭りしやすい環境のせいかもしれませんね。外の厳しさに対して、家の中ではどう快適に暮らそうか、それが映画鑑賞にも繋がっているような気がします。一方、夏は窓を開け放ち、フィールドで遊んだり、北海道と言えばBBQしたり、行動的になる人が多いですが、僕は夏も家の中で籠ってあれこれ調べごとをするのが好きです(笑)。
須摩:
冬の東川を訪れてみたい人へアドバイスあれば。
浜辺:
ここでしか見れない景色やアクティビティを体感しつつ、東川をのんびり散歩し、温泉に浸かり、部屋でゆっくり過ごす。オンとオフの両方を楽しんでもらいたいです。冬の東川はとても静かです。雪に吸音されさらに静かですから、趣味や勉強に集中するにも良いかもしれません。ぼぉぉとするだけでも良いと思います。

厳しい環境と思っているのは僕らのような訪問者だけで、彼らはしてみればそれは日常の出来事でしかいない。僕らが知ることのない光や風を的確に捉え、日々の生活の中で静かに心を満たしてゆく。その断片を少しでも望みたく東川への旅は当分おわらない。


LESSの2階には浜辺さんの弟さんが営むレストランON THE TABLEがあります。
こちらをどうぞ。



記者:須摩(ジャーナル担当)

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JOURNAL on 23rd Feb 2017

INTERVIEW WITH "LESS" OWNER
RAY HAMABE

LESS HIGASHIKAWA

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