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デンマークの小さな照明メーカーLE KLINT(レ・クリント)。細かく折られたプリーツシェードが上品で、世界中で人気を集めるも、そのフィロソフィーは以外と知られていない。始まりは一人の建築家の紙遊びと言われている。

20世紀初め。デンマークの著名な建築家P.V.イエンセン・クリントが、眩しかったアルコールランプの灯りを手元にあった紙で覆った。デンマークに古くから伝わる切り絵文化と、アジアの折り紙文化に関心があった彼ならではの発想。規則的に連続する折りは、大変美しい陰影を表現し、これがレ・クリントの原点とされる。同社を代表する円錐形シェードの中央が開いているのは、火で燃えない為。LEDや蛍光灯に変わった現代でも、当時の意匠が今も残るのは何だか嬉しく思えた。

ものづくり一家であるクリント家の趣味の延長として、その後もつくり続けられたプリーツシェード。P.V.イエンセンの息子であるターエ・クリントによって1943年に遂に法人化され、レ・クリント社が誕生する。ターエ自身もデザインを手掛けるが、経営者としての才能も豊かだった彼は、プリーツを複雑に織り込み本体と連結する機構をビジネスとして昇華させる為に特許を取得。そして、デンマーク家具の父コーア・クリント(ターエとは兄弟)もデザインに参加するなど、次第に機能的にも優れたあかりの名品として世に知られていった。ところで、社名であるLE KLINTの“LE”にはどんな意味があるのか、ふと気になった。デンマークの会社ですから、フランス語のleとも違うはず。一説にはコーアの奥様の愛称と言われたり、またはターエの娘さんの名前からとったとも。家族を大切に思う、家族経営ならではのエピソード。

それでは、ものづくりの現場に目を向けてみたい。オーデンセという小さな島にその工場はある。中を覗くとまず意外な光景が飛び込んできた。多くの職人が作業をしている、それ自体は普通のことなのだが、なんと職人のほとんどが女性。男性の職人がプリーツシェードを織っていたこともあったそうだが、薄いガラスを扱うような繊細な作業にゴツゴツとした男性の手は不向きらしく、今では多くの工程を女性職人が担っている。具体的な行程はこう。まず、素材となるのは1枚の樹脂シート。凹凸のついた筒状の金型をシートの上で転がして折跡をつけ、一つ一つ女性が手作業で折っていく。かなりのテクニックが問われる作業で、数あるシェードデザインを全て折れるようになるには10年はかかると言われている。熟練の折師になるとピアノを弾くように、しなやかな手つきでスピーディに折り上げてしまうそう。全てを織り上げたら、シートの端と端を筒状になる様に合わせてミシンで縫い、完成する。シェードの裏にはLE KLINTのエンボスと担当した折師のサインがはいっているそうだが、残念ながら、製作過程で消えてしまったり、複雑な折りに隠れて見えることは少ない。また、25年間メタルワークを専門にする職人も在籍し、テーブルランプやフロアランプの木部や金属なども殆ど自社で製作、組立まで行っている。デンマークメイドに対する徹底したこだわりが感じられた。

そんな彼女達をレ・クリント社はDNAと称するほど大切にしている。工場近くにトレーニングジムをつくり日頃の肩コリを解し、出勤した朝には朝食が用意され、コーヒーブレイクもある。だから皆この職場を愛し、ベテラン勢が多く在籍。その表情はイキイキと楽しそうに仕事に向けられている。高いクオリティの秘訣は彼女達の笑顔だったのでしょう。そして、新たなデザイナーを発掘する為に地元デザイン学校との交流を欠かさない。例えば新しいシェードデザインのコンペティションを開いて、学生達に作品発表の場を提供している。その機会をきっかけに、学生がデザイナーとなりレ・クリントからデビューしたこともあったそうだ。これらに共通するのは“人”の存在。レ・クリントの歴史がその大切さを裏付けている。

現代では、王室御用達に認定されるなど格式の高さある一方で、一般家庭で当たり前に愛用される身近な存在でもある。P.V. イエンセンの紙遊びから始まっておよそ1世紀。クリント家の手づくりならではのフォルムは、当時の精神とともに今も受け継がれてる。

Le・Klintの商品はこちらにてご紹介しております。

コメント:中島
イラスト:村尾

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LE KLINT

JOURNAL ON 20TH MAY 2017

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