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ミッドセンチュリー期に息吹を吹き込まれた家具は、半世紀の月日を超えて私たちの元へ。きめ細かい良質な木材とじっくり向き合いながら丁寧に製作された佇まいから、当時のデザイナーや職人らの想いが垣間見える。今回は私たちのメンテナンスについて作業順にお伝えします。

まずは私たちも彼らと同じ視点で家具を見つめ、構造を理解する。一度は役割を果たした疲れを解してあげるように、一つ一つのパーツを外していきメンテナンス箇所を把握。言葉を持たない家具との対話はこうして始まる。

まずは表面のサンディング。これは私たちのメンテナンスの最も大切な作業。丹念に木の表面をうっすらと削り落とすことで傷や汚れ、古くなった塗装がリセットされる。広い面には機械を当てるが、最後は手作業で角までムラなく滑らかに整えていく。家具が綺麗になっていく様子を見ていると何だか嬉しくなって、手や腕の疲れを忘れて夢中になる。

表面に溜まった木屑を一拭きすれば、無塗装状態のまっさらな木肌が現れる。掌で撫でて仕上がりを確かめた後はベースオイルを。オイルが木肌に触れた瞬間、導管を通じてじっくりと浸透していき、みるみるうちに半世紀の時を経た木材ならではの深みある表情になってゆく。この表情は材質や製作年代によって異なり、いつも瑞々しい気分にさせてくれる感動の瞬間だ。

すると家具本来の美しさが戻り、製作当時まで時間を巻き戻したような感覚。これは木工家具ならではのこと。自然の偉大さを再確認させられると共に、この大切な資源を守っていきたいという使命感も湧いてくる。サンディングの成果が表れるこの瞬間が私たちはとても好きで、互いの家具をみて称えあう。

ベースオイルを十分に乾燥させた後、必要があれば経年変化によって生じた欠けや窪みなどにパテ埋め処理を施す。そしてパテの乾きをしっかり待ってから、箇所に木目を描くタッチアップ。木目の流れや色味を読むとても繊細な作業。幾つもの色をパレットで調合しながら、絵画を描くように小筆で丁寧に色を重ねていく。自然光の当たる角度や、自身の立ち位置を変え、様々な視点から違和感がないかどうかチェック。艶や色味が自然な木目に見えるよう表現することはスタッフの技量が試され緊張感を持って臨んでいる。

タッチアップ後、塗装作業に移ってゆく。塗装と言っても積極的に色艶をのせることはない。耐水・耐熱・耐退色効果を高める意図で行っている。木の風合いを損なわないよう艶を抑えたり、木目を生かす為の多少の艶をのせたり、樹種や家具の種類に応じて塗料の種類を精査。また例えばテーブル天板には耐水効果のあるウレタン塗装を施す。最終的な仕上がりを左右する重要な工程のためベテランのスタッフがガンスプレーを握る。

綺麗に仕上がったパーツを組み上げると完成は近い。保管しておいた真鍮のビスや蝶番で元の位置に取付けしたり、揺れやぐらつきがある箇所は接着剤とクランプを用いて固定。用いる接着剤は色々と検証した結果、強度の硬化が必要な場合、時に柔軟性が必要な場合など、負荷のかかり方によって接着剤の種類を変えている。

組み上げ後、扉の開閉がスムーズか、グラツキが無いかなどの最終調整を行う。さらに、ヴィンテージを特別な想いでお求めになるお客様の為に、収納内部や本体の底面や背面など、普段目に見えないところまで綺麗にすることを心掛けている。

最後にトップコートとしてハンドワックスを塗布することで、表面に薄い膜をつくり、乾燥や色褪せなどの劣化防止、撥水効果がさらに高められる。しっとりとした質感もあり、経年変化した天然木の表情がより美しく映る。こうして、丁寧にメンテナンスされた家具達は「ハイク・クオリティ」として本来の姿を取り戻し、次の活躍の場を求めショップへと向かう。

メンテナンススタッフが作業を通して感じたことは、まず撮影スタッフに伝えられ、必要画像をデータ化しつつ、その家具が最も輝く瞬間を撮影。後にショップスタッフに伝えられ、ウェッブサイトのコメント、ショップでの接客を通してひとつひとつの家具について丁寧にご説明差し上げつつ、実際の家具を見ながら「ハイク・クオリティ」を感じとっていただけたらと思います。

なお、最大限可能なメンテナンスを施しておりますが、ハイクが販売する家具は半世紀以上前に製作されたヴィンテージ家具となり、製品特性、特徴をご理解、ご納得された上でご検討、ご購入をお願いしています。製品についてご不明点あるお客様はご遠慮なくストアまでご連絡下さい。プロスタッフがご対応させていただきます。またご購入後のサポートにつきましてはこちらをご覧ください。


記者:中島

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JOURNAL ON 18th May 2020

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