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JOURNAL / OUR NEIGHBORHOOD / 菓匠雅庵



今回のOUR NEIGHBORHOODは、和菓子屋さん「菓匠雅庵」。ハイクから歩いて1分、住宅地の中にひっそりと佇む名店。手土産にとハイクの代表も頻繁に通う店。和菓子、お店について雅庵の代表で和菓子職人の皆川典雅さんにお話を伺った。

谷山:
お店を始められたきっかけを教えて下さい。
皆川:
父親がもともと、和菓子の卸売業を営んでいた事もあり、いつか自分で作る和菓子を提供したいという気持ちがありました。大学卒業後、いくつかの和菓子屋さんで修行を積んだあと実家に戻り、卸売業の仕事をする一方で、家内と業務が終わった後に作れるものだけ作り、月1回工房のスペースで販売をしたのが始まりです。その後、本格的に工房の一部をお店に改装して「菓匠雅庵」として2004年に始めました。
谷山:
店名の「雅庵」の由来は。
皆川:
私の名前、「典雅」から漢字一文字を取って付けました。とても単純です(笑)
谷山:
お店、工房のある東山はどんな場所ですか。
皆川:
実家、工房がこの場所にあり東山で育ちましたので完全な地元。とても慣れ親しんだ場所です。 大通りの辺りは目まぐるしく変わってますけど、この辺りは昔から住宅街でほとんど変わらず、個人経営の個性的なお店も多いのがいい。今でこそ、ここでお店をして良かったと思いますが当時は、「本当にここでお店するの?」なんて周りの方から言われていました。
谷山:
通年のお菓子の中で「特製どら焼太鼓判」「わらび餅」についてこだわりを教えて下さい。
皆川:
特製どら焼き太鼓判は、通常のどら焼きよりも生地をかなりふわふわに焼き上げるように工夫しています。 生地に使う卵は、甘みが強く、濃厚な味わいが特徴の栃木県産の極上卵「御養卵」を100%使用しています。 その柔らかい生地に合わせるあんこは、北海道の十勝平野から厳選した上質な小豆を使用して、少し柔らかめの 自家製つぶあんに仕上げています。
わらび餅は、極限までやわらかさを出すために、温度の微調整を繰り返して丹念に煉り上げます。その作業を行うのは僕と製造責任者の2人のみ。 人が変わるとどうしてもあの食感は生まれないのでそこは徹底しています。お餅の上には、京都産の風味豊かな極上きな粉をたっぷりかけて仕上げます。このわらび餅は、僕の師匠から開店祝いにと直々に教えていただいたものをベースに、自分なりのアレンジを加えて完成した思い入れのある看板商品の一つです。
お出しするすべてのお菓子はとにかく素材にこだわっています。 ただ素材が良ければそれでいいのかというわけでもなくて、大切なのは作り手の技術はもちろん、想いがあってこそだと思います。和菓子に対して、食べていただく方への想いが詰まっていれば詰まっているほどいいものがご提供できると考えています。
谷山:
四季を表現する和菓子、職人さんの感性がそのまま作品になる印象がありますが、感性を豊かにするために日頃意識されている事はありますか。
皆川:
日本の美しい四季を感じる為には、自然豊かな場所に行く事はもちろんですが、幼少期に山や川、田んぼで泥だらけになりながら遊んだ体験やその場所の光景が根底にある様に思います。昔の情景を思い出しながら作る事も多いです。 日々の生活の中では、街を歩く時に花屋さんに立ち寄って旬の草花を見たりします。 もっと言えば、流行に敏感な女性の着ている服の色や、今世間で関心のもたれているモノや場所からヒントを得たりする事もあります。 伝統を守りながらも、バランス良く流行も取り込んでいく事でより魅力的な作品ができるのではないかと思います。
谷山:
お店又はご自宅でとっておきのものはありますか。
皆川:
店内にもディスプレイしていますが、工芸菓子と呼ばれる江戸時代より伝わる伝統工芸で、菓子の材料を使って製作する造形作品です。 これまでにいくつか製作し、「農林水産大臣賞」「工芸大賞」をいただき思入れのあるものです。
谷山:
何をされている時が一番満たされますか。
皆川:
たまの休みに仲間とたわいもない話をしながら食事したり、お酒を飲んでいる瞬間が一番満たされます。 あとは、最近はなかなか行けていないですけど趣味のでゴルフをしている時ですかね。
谷山:
ご自宅ではどういった家具をお使いですか。
皆川:
ダイニングテーブルや椅子は、昔から両親が使用しているものを今でも大切に使っています。かれこれ、もう40年ぐらいは経ちますのでガタもきてますけど愛着のある家具ですね。

ハイクから少しだけ坂を登れば、黒い格子に紅葉の木が一本伸びる雰囲気のある店構えが見えてくる。ショーケースには、わらび餅やどら焼きなどの通年のお菓子をはじめ、季節の生菓子、和菓子の芸術作品といわれる上生菓子が並べられる。どれも美しくつい目移りしてしまう。しばらく眺めていると、店奥の工房から、白い作業着を着た職人さんが作業の手を止め出迎えてくれる。工房を兼ねた雅庵ならではの光景だ。特に人気のわらび餅は、蓋を開けるとお餅が隠れるほどきな粉が敷き詰められ、香ばしいかおりが一気に広がる。きな粉がよく絡んだお餅は、トロリとなめらかな口当たり。自然な甘みと口の中でとろける食感がやみつきになる美味しさ。皆川さんのこだわりが詰まったわらび餅はぜひ食べていただきたい一品。




記者:谷山
写真:中島

OUR NEIGHBORHOOD

JOURNAL ON 16TH OCT 2017

INTERVIEW WITH 菓匠雅庵 代表 皆川典雅さん

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