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HIKE JOURNAL VOL.109


夏がうっすらと残していった足跡を必死で追いかけその後ろ姿にしがみつき、あたたかい太陽の光をめいいっぱい浴びながら過ごしていた9月。指の先まで名残惜しさをにじませながら月の終わりにカレンダーを一枚めくったとき、そこに姿をあらわす10月の文字はまさに、秋の真ん中への案内状。待ち遠しかったはずのその知らせを目にすると、なぜだかわずかな寂しさと焦りに気持ちがはやるのはなぜでしょう。「今年はもうあと3ヶ月しかない」とか「この季節はいつも何を着ていたんだっけ」とか、心の準備もままならないうちに届いたその知らせにおののき、10月1日にはそんなことばかりが私たちの頭をいっぱいにしています。

そうかと思えばぐっすり眠ってやってくる翌日の朝には、より澄みきって高く大きく広がった空を眺めて嬉しさがこみあげ、通勤の自転車を漕ぐ足はますます軽く、鼻の先では油断なく金木犀の香りを探しています。夏に着ていたTシャツの上にコットンのシャツを羽織っただけの新しさのない服装でも、そんな身体をするりと抜けていく空気の明るさ健やかさが身に沁みて、かえって心地良いものです。

数日も経てば、突然放り込まれた秋の真ん中で、私たちはいつのまにやらすっかり季節に馴染んで、快適に日々を送りはじめています。夜風はだんだんと冷たさを増し、その肌寒さに人恋しさを覚えながらも、お気に入りのブランケットを引っ張り出してわざわざベランダに出て温かい紅茶を口にする幸せがあったことを思い出します。夏の間すくすくと育っていたベランダの植物たちも、芽吹きは一旦終わりを迎え、実ったものたちはふっくらと膨らみ成熟の時を待っているようです。夏が成長の季節だとすると、秋はその育ちが実り成熟を迎える季節。冬へ向け、生態系はエネルギーをため込み始めます。

動物たちや植物たちが冬に向けて身支度を整えるように、私たちも今は準備の時間なのでしょう。何をするにも申し分のない快適な気候の中で、次の季節へ向け、次の自分の成長の時へ向け、必要なエネルギーをたくさん蓄えることは、ぎゅっと甘味や旨味が詰まった美味しい秋野菜や冬野菜の持つ強さと同じです。栄養の詰まった旬の野菜や果物の恵みをいただき、長い夜にはゆっくりとベッドの上で読書をして、静かに眠りにつくこと。そんな当たり前のことごとをていねいに過ごしながら、エネルギーを蓄える季節がやってきました。




テキスト / 守屋 / @yukina.moriya

FROM HIKE

JOURNAL ON 15TH OCT 2021

10月のはなし