JOURNALNews, Feature, Our Neighborhood And more

JOURNAL / FROM HIKE / HOUSE TOUR


HIKEにゆかりのある方のご自宅に訪問し、インテリアを中心に暮らしにおけること、もの選びのこだわりを伺い、素敵に暮らす為のヒントやアイディアを発信するジャーナル。

沢山の木々に囲まれ、飛び石が轢かれたアプローチ。ここが東京だと言う事を、忘れてしまいそうになるほど緑に溢れた場所に建つ建物。こちらのご自宅に住まうのはHIKEのお客様であるK様ご夫妻。ご家族でアメリカに渡り20年以上ニューヨークで暮らした後、現在はこちらで二人暮らし。トリプレット型のこの建築は、日本を代表する建築家によるもの。もともとこの場所は森で、既存の大木27本を1本も切らずに建てて欲しいというオーナーの要望で設計された。その為、木々を縫う様に曲線を多用した建築は斬新かつ有機的。

「ここに越して来たのは4年前、帰国してから住んでいたのが都心の高層マンションで、便利なのは良かったのですが窓から見える景色、都会的な空間に精神的に疲労感を感じる様になってしまい、住まいを変えようと思った時にこの物件に出会いました。実際にこの場所に来てみたら建物の佇まいと環境の素晴らしさに心を奪われ、ここで暮らしてみたいと思いました。」

室内の壁は全て塗り壁で、しっとりとした質感、凹凸の少ない表面は自然光の反射も美しい。良く晴れた日は、ブロックガラスと木々を透過した光がゆらゆらと壁面を美しく照らす。ドアや備付キャビネットの取手、コンセントにいたるまで一切の無駄がなくミニマル。各所にある円柱もこの空間ではアートピースの様に見え、ひと繋ぎの部屋を程良く仕切る。 「素晴らしい建築、オーナーさんの思いが詰まった空間だからこそ、そこに置く家具も良い家具で応えたいと思いました。とはいえ、曲面の多い空間は家具の配置が難しく色々と試行錯誤しました。」と話すリビングルームには有機的なデザインの家具が並ぶ、2脚あるイージーチェアの1つはハンス・ウェグナーの代表作”ベアチェア”。低重心かつ包容力のあるゆったりとした座り心地は、ご主人のお気に入り。「ここに座ると全身の余計な力がふっと抜け、うたた寝をしてしまう事が多々あります。思い切りのいる決断でしたが、毎日使用してみてこの椅子の素晴らしさが分かりました。ウェグナーが晩年老人ホームに持ち込んだという話も頷けます。HIKEさん独自のシェイプを出した生地の張り方も素晴らしいですね。」

イージーチェアの脚元にはクヴァドラのラグ、程よい厚みのあるウールが上質で、ソフトな踏み心地はリラックス効果を高めると共に、リビングシーンをゾーニングする役割と円形で空間の調和を取りながらイージーチェアを自由な配置で楽しめる。壁面には、ヴィンテージではなくHIKEオリジナルの”フラットキャビネット”とフロス"IC ライト"でモダンな印象に。キャビネット上にはアメリカを拠点に活躍したアーティスト、アグネス・マーティン、ヨゼフ・アルバース、ドナルド・ジャッドのアート作品が並ぶ。優しい光が入る柱間、ご主人が床の間と呼ぶ場所には、ピウス・フォックスのドローイング。セレクトされたアートは曲線的な家具に対してミニマルで建築的な直線デザイン。ベッドに置かれた格子状のシャツ地のピローケースは生地から選びオーダーしたもの。ここでも曲線と直線のバランスを意識されている。

奥のスペースは奥様のお気に入りの場所。シャープなエッジが特徴のジョージ・イェンセンのロッキングチェアと浮遊感のあるレ・クリントのフロアランプ”スノードロップ"。「柱で区切られたコンパクトなスペースがとても落ち着き、窓辺の竹林を臨みながら心地よい揺れと共に読書や家族と電話している時間が至福の時です。それぞれがお気に入りのパーソナルチェアでリラックスできるのが良いです。」

お二人のインテリアを選ぶ基準や大切にされている事とは。 「ニューヨークに住んでいた頃に知り合ったファッションデザイナーがいるんですが、彼からインテリアについて多くを学びました。彼の家はクラシックで重厚感のある佇まいで、エントランスを入るとグリーティングエリアがあり、ここでウェルカムドリンクをいただきながら会話を交わす、続いてダイニングへ案内され食事を楽しみ、リビングで寛ぐといった明確なストーリーがある。品のある空間の中にも程よい生活感もあって訪れる人を気負いさせない心地良さがありました。ニューヨークに自宅を構える際、彼に相談をしてソファーの色からカーテンの柄、壁の色まで細部に渡りアドバイスをもらいながら作り上げていきました。その家に最適な家具のデザイン、配置やカラー、自分達では思いつかなかった発想がそこには沢山あって、インテリアに対しての考えがアップデートされた瞬間でした。どんな素敵な家具でも、それを活かす空間があって初めてその家具の良さが引き立つのだと。建物の構造や特徴をよく理解した上で、自分達がどの様に過ごしたいかストーリーやテーマを思い描き、自らの発想に偏らず信頼できる人やお店のアイデアや意見を積極的に伺いながら最適なセレクトをしてく事を大切にしています。その全てが揃う事で心地い空間となるのではないかと考えます。」

建築、インテリアをライフワークの一部として楽しんでいらっしゃるお二人。好きなものをただ集めるのではなく、まずは空間、テーマ、ストーリー、自分達らしさというしっかりとしたプロセスを持って、お互いに同じ視点、価値観でモノ選びをされている事が空間に統一感、心地よさを作り出しているのだろう。信頼する人、お店としてHIKEを選んで頂けた事を嬉しく思うと同時に、最良なアイデアと商品をご提供出来るストアでありたいと改めて思った。




写真・文章:谷山




FROM HIKE

JOURNAL on 2nd SEP 2022

HOUSE TOUR