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3人の年配の女性たちが横に並び、うきうきしながらアイスクリームを食べている姿を見て、どこか気分が明るくなった。フレッシュな色彩の服がよく似合う。その横には芝の上で寝っ転がる、心から寛いでいそうな女性がひとり。

今では有名な「ヒュッゲ」という言葉に対して、私が目にしてきたデンマーク人の生活はゆったりとした時間に留まらず、しっかりと緩急があるイメージだ。時にエネルギッシュで、時にチル。時間の流れの緩急もあれば、気持ちの浮き沈みもある。いつもニコニコしている訳ではない。

例えば、自転車に乗る人々はいたって真剣なことが多い。デンマークでは、大半の道で自転車専用レーンが用意されている。基本的には右側に寄って走り、左手から追い抜いていくルール。皆集中してる、、まるでレースのようだ。あたふたしていると車の交通まで妨げ兼ねないし、邪魔だと容赦なくベルやクラクションを鳴らされる。フラットな国なので走りやすく、どこにでも停められるので小回りが効きやすい。通勤手段として重宝されるのも頷けるが、私にとっては今も尚緊張感を要する乗り物だ。

この間参加した、コペンハーゲンから160kmほど離れた小さな島で行われたフェスにも友人は自転車に乗って現れた。聞けば自転車に乗り、更に車や電車、フェリーを駆使して長時間かけて移動して来たらしい。キャンプ用具をかつぎ、サイクリングをしながら島を楽しむなんてことも夏のレジャーの一つなのだそうだ。楽しい時間のために、躊躇なく体を使う人たち。なんて身軽なんだといつまでもはっとさせられる。そしてストイックな時間、ゆっくりする時間、ソーシャルな時間、ひとりを楽しむ時間、その時間の過ごし方を意識して選びとっているのだということが肌感覚で伝わってくる。そんな人たちの発するエネルギーに落ち着きを覚える国だ。

このところ強い日差しが減り、天候も安定してきた。突然の雨をあまり見ない。夏が終わろうとしているのだろう。長く暗い冬があったとしても、四季の存在に対して肯定的な言葉をよく耳にする。夏には夏、冬には冬の楽しみ方。晴れた日には、雨の日には、元気な日には、疲れた日には…

友人がたまに悲しい時にクッキーを作るんだ、と言っていて、なんだかいいなと思って聞いていた。



写真・テキスト / 藤原葉子 / @yokofujiwar
1990年アメリカ生まれ、日本育ちの写真家。上智大学卒。
2017年野口 貴司氏に師事し、2020年デンマークでの撮影を開始した。
人々の暮らしの中にある光や色彩に魅せられ、カメラを向けている。

FROM HIKE

JOURNAL on 7th Sep 2023

デンマーク、静かに夏が終わるころ