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急に気温が下がり、青空も冬晴れの様相を見せ始めた今日この頃、慌てて冬の装いを準備している方も多いのでは。この季節、より室内で温かく快適な時間を過ごすことができるよう足元から整えてみてはいかがでしょう。

室内空間で重要なアイテムの一つとして、ラグが挙げられます。ラグは保温性と断熱性に優れ、空気が乾燥してもホコリを舞い上げにくいという特性があり、特にウールは吸湿性と放湿性が高く、一年中快適に過ごすことができる上、繊維が天然の油分でコーティングされているのでホコリや汚れがつきにくい素材としてお勧めです。今回のジャーナルでは上質なウールやリネンといった天然素材を使用し、スウェーデンの王室御用達でもあるメーカー、Kasthall(カスタール)をご紹介いたします。触れる瞬間に感じる密度の高さと肌触りの良さなど、その確かさの理由を探ってみましょう。

1889年にカスタールのラグ工場がスウェーデン西部にある小さな町、Kinna(シンナ)で操業を開始。スウェーデンでは初の工業用ラグ工場でした。機械と手仕事を組み合わせた生産方法は、先進国の産業に電力が導入される時期に先駆け、スウェーデンの産業を先導しました。創業から数年後には、家庭用ラグの製造を開始。「美しく、丈夫で、その上を歩くと楽しくなる」と評価され、その評判は世界に広まりました。今では、スウェーデン王室の紋章の使用を許されるなど、国内でも有数の企業です。

その唯一無二のクオリティを生み出している理由は、デザインから製作、仕上げや刺繍に至るまでの全工程を自社で管理するという徹底した完璧主義にあります。特に、糸がラグのデザインや品質を左右する根幹を成すものという考えから、糸そのものから開発することにこだわっています。中でもウールは、高級とされているニュージーランド産の羊毛のなかでも、太くて白い原毛のみを使用。耐久性が高い上、染色前に漂白をしなくてもいいほどに白いので、化学薬品を使用しなくて済むのです。

またカスタールは、品質と同じくらい高いデザイン性に注力しているブランドでもあります。創業以来、本社の隣にある工場ではデザイナーと作り手の密接なコミュニケーションが取られ、イメージの実現と高い品質の両立に取り組んでいます。近年では、Ilse Crawford、Paola Navone、Jean Marie Massaud、Claesson Koivist Rune(CKR)、David Chipper Field など、世界で活躍する建築家やデザイナーたちがカスタールとビジョンを共有し、独創的なラグを生み出してきました。CKRがデザインを監修する日本橋兜町のホテル「K5」のために同デザイナーと共同開発した「Tatami rug」では、日本人の記憶と強く結びついている畳をイメージした特別なラグを制作。CKRのメンバーの一人であるオラ・ルーネは、ラグの機能性について次のように語ります。

「ラグやカーペットは、ゾーン(領域)を生み出します。たとえば公共施設なら、ロビーでソファやミーティングテーブルの下に敷けば、パーティションを設けなくてもひとつの“場”が生まれます。まるで海の上に小さな島が浮かび、そこでさまざまなシーンが起こっているかのように。」

なくても空間は成立するかもしれないけど、あれば空間が豊かになる。その存在自体が美しく、そして気持ちがいい。それがラグの最も重要な機能と呼べるかもしれません。そしてラグは、時間の芸術でもあります。デザイナーがアイデアを吟味し、糸の加工、製品改良を重ねた上で精度が高まるとともに、頼れる職人たちの確かな手が試行錯誤の中で熟練度を増し、優れたラグが生み出されます。そのようなラグの上で私たちが営む親密な時間は、他に代えがたいものとなるでしょう。


Kasthall Rug Exhibition
会期 : 2023年12月9日(土)− 12月24日(日) 12:00 − 18:00 火・水曜日定休
会場 : HIKE 東京都目黒区東山 1-10-11



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JOURNAL on 4th Dec 2023

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