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JOURNAL / FROM HIKE / 井手裕介 写真展「distance」 開催のお知らせ



この度HIKEでは、編集者で写真家としての顔も持つ井手裕介の、初となる写真展「distance」を2025年9月5日(金)から開催いたします。


会場では、作家自らが現像・プリントした作品が並ぶほか、今回刊行される写真集『distance』もご覧いただけます。会期中には写真集に寄稿した写真家・鈴木理策氏を招いてのトークイベントも予定。普段編集者として活動する作家がインタビュアーを務める「公開取材」形式で実施いたします。



2020年、初期のコロナウイルスに罹患し、嗅覚を半年ほど”失う経験を味わった”ことから、自身の知覚に対する関心を高めてきた作家は、同年末、今となっては少々仰々しい、半世紀ほど前に作られた電子機構のないカメラを手に取るようになりました。


- 写真集『distance』より抜粋 -

焦点距離が固定されたレンズの絞りとシャッター速度を、ダイヤルを回して設定し、反転した像をピントグラスでじっと見て合焦。引き蓋を引いて、シャッター幕をガシャン、とおろす。すると機械が設定した通りの露光量で、像がネガフィルムに記録される。そこでは“自分にはこう世界が見えている”という主観は一度排除される。どちらかというと、 “世界をこういう設定でドキュメントしようとした”というデータが焼き付くだけだ。その記録のされ方が、儀式めいた撮影行為の時間を含めて、妙な安心感をもたらしてくれた。フィルムを現像し、そこに像が写っていることに素直に感動した(なお、最初に購入したカメラは蛇腹に穴が空いていて、向きによってはふわりと光がイメージを曝露していた。そのことが、写真の原理をシンプルに理解させてくれて、自分の行為に手触りを感じたことも添えておく)。


暗室でネガからプリントを焼き込む時間は、また違った感慨をもたらしてくれる。「ネガは楽譜、プリントは演奏」とは写真教育の最初に教わるようなクリシェだが、プリントは自分で濃度や色味などをコントロールすることができる。そこで初めて、撮影した時のことを思い出しながら、こんなふうだったかな。と記憶を再現してみる。多分、現実とは少しずれているのだろう。でもその“現実”もまた、撮影時の自分という不確かな存在の眼球を通して脳が記憶したものであって、掴もうとしたところで叶わない。


目視で、カメラのピントグラス越しに、そして暗室でルーペを使って。何度もイメージをじっと見る。引き伸ばされたプリントの束が印画紙の箱に詰まっていく。そうやって、自分の記憶が一旦は定着していくことに、安堵する。


世界との距離に思いを巡らし、試行錯誤する時間を楽しめるようになったことは、撮影行為が自分に与えてくれたギフトだと思う。



井手裕介
1992年生まれ。編集者としての活動と並行し、カメラを通した記録・知覚の探求に取り組む。


『distance』
ハードカバー/112ページ/私家版
写真:井手裕介
デザイン:Xiaojun Shi
テキスト:鈴木理策
プリンティングディレクター:Yin He



会期
2025年9月5日(金)- 9月15日(月) 12:00-18:00 火・水曜日定休
作家在廊日 5日、6日、7日、13日、14日、15日


会場
HIKE 東京都目黒区東山 1-10-11


写真家・鈴木理策氏とのトークイベント
2025年9月5日(金) 18:30 - 19:30(18:10開場)
ご予約なく皆さまご参加いただけます。当日の状況により立ち見、または人数を制限させていただく場合がございます。
会場設営の為、当日は17:30に一時閉店いたします。


鈴木理策
1963年生まれ。2000 年に写真集『Piles of Time』で第25 回木村伊兵衛写真賞受賞。主な写真集に『知覚の感光板』(赤々舎)、『Water Mirror』(一般社団法人日本芸術写真協会・Case Publishing)、『SAKURA』『White』(共にedition nord)、『Atelier of Cézanne』(Nazraeli Press)など。東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授。

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JOURNAL ON 28th Aug 2025

井手裕介 写真展「distance」開催のお知らせ