JOURNAL / FROM HIKE / ABOUT PP MOBLER
PP Moblerを語るうえでハンス・ウェグナーの存在は欠かすことが出来ません。彼らの初期の仕事は、APストーレンの下請けとしてベアチェアの骨組みを製作することでした。そこへ足を運んでいたのが、デザイナーのハンス・J・ウェグナー。彼との出会いが工房の運命を大きく変えていきます。ある日、ウェグナーが「生地で隠れる部分だから、そんなに丁寧に作らなくてもよいのではないか」とアイナーに伝えたところ、「たとえ見えなくても、手を抜くことはできない」と言葉を返したそうです。PP Moblerの家具に対する誇りはウェグナーの心に響き、それからは頻繁に工房に訪れてはプロトタイプのつくるような関係へと発展していきます。
1960年代後半になり、大手量販店の進出や若者文化の影響で、安価な家具が流行します。かつて活躍していた多くの工房がこの頃に廃業していき、PP Moblerも厳しい状況でしたが、ウェグナーとアイナーは技術の高い職人の仕事を守りたいという共通の想いを持っていました。大量生産品に比べて、職人がつくった家具がいかに優れているか、それを示すことのできる家具をウェグナーがデザインし、PP Moblerが製造するということが互いの使命となったのです。ウェグナーは他の工房で作っていた技術的に難しく、品質の高さが求められる家具の多くの製造をPP Moblerに任せることにするのです。
PP Moblerは創業者のアイナーが現役を退いた後も、ペダーゼン家が継いでフィロソフィーは大切に守られています。世界的なファクトリーにまで発展を遂げた現代でも職人の数は僅か数十名。だからこそ創業者の考え、ウェグナーの意図が隅々まで行き届くのでしょう。また、ウェグナーが1993年に引退するまで20年ともに仕事をしてきた長女マリアンヌ・ウェグナー氏が、父に代わり家具のクオリティ管理を担っていることも重要です。図面の背景には当然そこに至るまでの過程があり、どこに苦労して、どんな拘りをもっていたのか、現代の職人にその情熱を伝えることができます。
PPモブラーの家具が特別である理由のひとつとして、徹底した木材管理も欠かすことができません。木材は持続可能な森林から計画的に伐採されたものに限られています。健康状態のよい木はそのまま残して成長させ、それらの木の種から自然に新しい木が芽生えます。大木は周囲の若い木を風などから守る役割も果たし、やがて寿命を迎えた木材を伐採して、PP Moblerは木材としています。
木は自然から切り出された時は水分を多く含むため、通常の工房が含水率5%まで乾燥させるところを、PPモブラーはさらに時間をかけて3%まで乾燥。部材を作った後も1か月寝かせ、ようやく組み立てに入ります。今までに納期が6ヵ月や8ヵ月と聞いて驚かれたことがあるかもしれませんが、納期は確かさの裏付けでもあります。森から生まれた素材を活かした優れた家具を、世代を超えて使い継いでいくことで未来の森を守ることにもつながるのです。
PP Moblerが歩んできた歴史は、職人の誇りと自然への敬意に支えられています。その姿勢は創業から今日まで変わることなく受け継がれ、これからも大切に守られていくでしょう。彼らの椅子やテーブルには素材を育んだ森の時間や、職人の手仕事が息づいています。その家具を日々の暮らしに迎えることは、その物語を未来へと繋げていくことでもあります。
最上の画像 左ハンス・ウェグナー 右アイナー・ペダーゼン
JOURNAL ON 18th SEP 2025
ABOUT PP MOBLER
STORE INFORMATION
1-10-11, Higashiyama, Meguro-ku, Tokyo, 153-0043 JAPAN Open Thur - Sun 12:00-18:00 Closed Mon, Tue & Wed 03-5768-7180(T) shop@hike-shop.com HIKE Area Map
JOURNAL / FROM HIKE / ABOUT PP MOBLER
PP Moblerの始まりは1953年のデンマーク。50年代は著名なデザイナーらの活躍を機に北欧家具業界が大きく飛躍した時期でした。世界に向けて羽ばたく彼らの背中を追って多くの職人が工房を立ち上げた中で、アイナー・ペダーセンと兄ラースも家具工房を設立。二人の名前とデンマーク語で工房を意味する“Mobler”を組み合わせてPP Moblerとしました。のちに世界的な評価を得るPP Moblerの誕生です。
PP Moblerを語るうえでハンス・ウェグナーの存在は欠かすことが出来ません。彼らの初期の仕事は、APストーレンの下請けとしてベアチェアの骨組みを製作することでした。そこへ足を運んでいたのが、デザイナーのハンス・J・ウェグナー。彼との出会いが工房の運命を大きく変えていきます。ある日、ウェグナーが「生地で隠れる部分だから、そんなに丁寧に作らなくてもよいのではないか」とアイナーに伝えたところ、「たとえ見えなくても、手を抜くことはできない」と言葉を返したそうです。PP Moblerの家具に対する誇りはウェグナーの心に響き、それからは頻繁に工房に訪れてはプロトタイプのつくるような関係へと発展していきます。
1960年代後半になり、大手量販店の進出や若者文化の影響で、安価な家具が流行します。かつて活躍していた多くの工房がこの頃に廃業していき、PP Moblerも厳しい状況でしたが、ウェグナーとアイナーは技術の高い職人の仕事を守りたいという共通の想いを持っていました。大量生産品に比べて、職人がつくった家具がいかに優れているか、それを示すことのできる家具をウェグナーがデザインし、PP Moblerが製造するということが互いの使命となったのです。ウェグナーは他の工房で作っていた技術的に難しく、品質の高さが求められる家具の多くの製造をPP Moblerに任せることにするのです。
PP Moblerは創業者のアイナーが現役を退いた後も、ペダーゼン家が継いでフィロソフィーは大切に守られています。世界的なファクトリーにまで発展を遂げた現代でも職人の数は僅か数十名。だからこそ創業者の考え、ウェグナーの意図が隅々まで行き届くのでしょう。また、ウェグナーが1993年に引退するまで20年ともに仕事をしてきた長女マリアンヌ・ウェグナー氏が、父に代わり家具のクオリティ管理を担っていることも重要です。図面の背景には当然そこに至るまでの過程があり、どこに苦労して、どんな拘りをもっていたのか、現代の職人にその情熱を伝えることができます。
PPモブラーの家具が特別である理由のひとつとして、徹底した木材管理も欠かすことができません。木材は持続可能な森林から計画的に伐採されたものに限られています。健康状態のよい木はそのまま残して成長させ、それらの木の種から自然に新しい木が芽生えます。大木は周囲の若い木を風などから守る役割も果たし、やがて寿命を迎えた木材を伐採して、PP Moblerは木材としています。
木は自然から切り出された時は水分を多く含むため、通常の工房が含水率5%まで乾燥させるところを、PPモブラーはさらに時間をかけて3%まで乾燥。部材を作った後も1か月寝かせ、ようやく組み立てに入ります。今までに納期が6ヵ月や8ヵ月と聞いて驚かれたことがあるかもしれませんが、納期は確かさの裏付けでもあります。森から生まれた素材を活かした優れた家具を、世代を超えて使い継いでいくことで未来の森を守ることにもつながるのです。
PP Moblerが歩んできた歴史は、職人の誇りと自然への敬意に支えられています。その姿勢は創業から今日まで変わることなく受け継がれ、これからも大切に守られていくでしょう。彼らの椅子やテーブルには素材を育んだ森の時間や、職人の手仕事が息づいています。その家具を日々の暮らしに迎えることは、その物語を未来へと繋げていくことでもあります。
最上の画像 左ハンス・ウェグナー 右アイナー・ペダーゼン