高橋さんは美術大学で建築を学んだのち、建材製作やオーダー家具の仕事を通して木という素材と深く関わってきた。しかしコロナがきっかけで家具の受注が減少。その時、器好きだった祖父母との記憶に導かれるように、器の製作に足を踏み入れる。祖父が集めていた古伊万里様式の花びらのような縁のイメージが、そのまま高橋さんの現在の作品につながっている。その後、パートナーである今日子さんと、軽井沢に地元の食材を扱う食料品店&カフェである「Horse and the Sun」を開業。それと同時に生活と製作の拠点も軽井沢に移る。
高橋主馬(タカハシ カズマ)
1993年、東京都国分寺市生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、オーダー家具や靴制作の会社を経て、2020年頃から木工旋盤を始める。2024年春に軽井沢へ移住し、パートナーと共に「Horse and the Sun」を開業。土地の食品の魅力を伝えながら、木工作家として活動する。
1-10-11, Higashiyama, Meguro-ku, Tokyo, 153-0043 JAPAN
Open Thur - Sun 12:00-18:00 Closed Mon, Tue & Wed
03-5768-7180(T) shop@hike-shop.com HIKE Area Map
作家・高橋主馬の作品製作と暮らし
初めて彼の作品に触れたのは、代々木にあるレストランで食事をした時だった。オーナーとの対話の末に完成したというふくよかな木の器が、鮮やかながら滋味深い料理を包み込んでいた。持ってみると、心地よい木の重みと感触が手に伝わってくる。端末で読書するのと、ずっしりとした本のページを捲るのがまるで違う体験であるように、彼の器は確かにその夜の体験として手のひらに余韻を残していた。
高橋さんは美術大学で建築を学んだのち、建材製作やオーダー家具の仕事を通して木という素材と深く関わってきた。しかしコロナがきっかけで家具の受注が減少。その時、器好きだった祖父母との記憶に導かれるように、器の製作に足を踏み入れる。祖父が集めていた古伊万里様式の花びらのような縁のイメージが、そのまま高橋さんの現在の作品につながっている。その後、パートナーである今日子さんと、軽井沢に地元の食材を扱う食料品店&カフェである「Horse and the Sun」を開業。それと同時に生活と製作の拠点も軽井沢に移る。
山間に佇む小さなアトリエで、高橋さんは全ての製作を行う。木々に囲まれた、美しい光の差し込む部屋で、彼は黙々と旋盤に向かい合う。旋盤の作動音の合間には、すぐそこを流れる小川の水音、野鳥や鹿の鳴き声が耳に届き、削られた木片から放たれる樹脂の香りが部屋を満たしている。旋盤で慎重に削り出した器に、幼少期から使い慣れた左利き用の小刀で、自分の呼吸に合わせ、また時には音楽のリズムに合わせて、丁寧に彫りを施していく。最後に蜜蝋を塗り込めば、木目が鮮やかに浮かび上がる。窓辺の自然光の中、艶を確かめながら丹念に塗り込んでいく。
レストランの依頼案件などを除き、高橋さんの作品は全て一点もの。旋盤による均整のとれた形と、自然の木目、敢えて手彫りを施したゆらぎのある輪郭線が不思議と溶け合う作品には、どれ一つとして同じものはない。材木屋では、そこにある多様な材からどんな作品を作れるかイメージしながら素材を選ぶという。樹種の違い、個体差による違いを避けるばかりか、作家自身が楽しんでいる。
お話を伺っていて感じたのは、いつも彼が偶然出会うものに対してオープンであるということだ。完璧を求めようとせず、常に遊びを持っているからこそ、彼の作品は幼い頃の記憶や、出会う人々、素材との関係で変化してゆく。彼の作品に触れた時に自然と肩の力が抜け、笑みがこぼれるのは、作品を見て、使う私たちにも、そうしたものとの関係性を少しだけ取り戻させてくれるからかもしれない。
今回の展示では、普段の器サイズの作品に加え、家具スケールの品も制作頂いた。「夏の終わりから秋にかけて制作したので、 きのこ狩りの影響を感じさせる作品が多い気がします」と高橋さん。彼が出会ってきた様々な美しいものの記憶に、私たちも手のひらを重ねてみる。
高橋主馬(タカハシ カズマ) 1993年、東京都国分寺市生まれ。武蔵野美術大学を卒業後、オーダー家具や靴制作の会社を経て、2020年頃から木工旋盤を始める。2024年春に軽井沢へ移住し、パートナーと共に「Horse and the Sun」を開業。土地の食品の魅力を伝えながら、木工作家として活動する。
インスタグラム:@kazuma_takahashi8高橋主馬 企画展「Growing Curves」
会場 : HIKE
会期 : 2025年11月29日(土) − 12月14日(日) 12:00 − 18:00 火・水曜日定休
作家在廊日 : 11月29日(土), 30日(日)
HIKEすぐ近くのギャラリースペースがメイン会場となります。
通常は月曜日も定休日ですが、会期中は営業いたします。