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JOURNAL / FROM HIKE / ABOUT MUNI CARPETS



桜の満開を迎え、いよいよ春本番。植物が少しずつ芽吹き始め、鳥達も気持ち良さそうに歌っているのを見ると清瑞々しい気持ちになります。そんな春だからこそ気分一新、お部屋の模様替えを検討されているお客様のご相談も多くなってきました。既存の家具は変えずに部屋の景色をガラリと変えるお勧めのアイテムの一つにラグが挙げられます。リビングに敷けば、いつものソファやキャビネットによりまとまりが生まれたり、寝転んで寛げるスペースも得られ、空間の完成度や居心地が格段に上がります。素足で過ごすのも心地良い季節ですから、素材や作りにこだわったラグを踏みしめ、楽しむのはいかがでしょうか。

今回は皇族から歴史に名を残す数多の著名人までをも魅了してきたクラシカル・チャイニーズ・ラグを現代に再構築した「MUNI CARPETS」のお話。ラグの最高峰といっても過言ではないこだわりやエピソードに迫ってみましょう。

永い中国絨毯の歴史のなかでも一際気品に満ち、洗練された絨毯の一群。明朝末期から清朝初期(16-18世紀)に宮廷への献上品として製織された幻の絨毯、それが「クラシカル・チャイニーズ・ラグ」です。手織りとは思えない精巧且つ美しい文様や味わい深い色調は富と権力の象徴として時の皇族が重宝し、敷物としての用途以外にも柱に巻き付けたり、壁面にタペストリとして掛けられ、室内を豪華に彩りました。また、皇帝の移動に合わせて足元のラグも移設され、常に動きを共にした逸話からも存在の重要性が伺えます。そして、明朝(漢民族)から清朝(満州民族)へと異なる文化を持つ民族に引き継がれたのもその美しさ故でしょう。

しかし、清朝の衰退からクラシカル・チャイニーズ・ラグは独特の美しさを次第に失い、清朝の滅亡と共に宮廷工房は途絶えることに。その後、絨毯の生産は海外マーケットに向けて作られるようになり、それらは商業主義のデザイン、機械や化学染料による大量生産によって、本来の伝統美を受け継ぐ絨毯とは異なるものとして世界中に広まりました。やがて時は経ち、宮廷の奥深くで眠っていたクラシカル・チャイニーズ・ラグが再び脚光を浴びるのは20世紀初頭。ニューヨークのオークションで紹介されるやいなや上流階級の人々に羨望の眼差しで迎えられ、瞬く間にステータスシンボルとなりました。その品格ある東洋の美は、ルイス・カムフォート・ティファニーやココ・シャネル、フランク・ロイド・ライト等、欧米のトップクリエイターを魅了し、彼らの個性を表現する大切なアイテムとして用いられるように。特にココ・シャネルは17世紀中頃にヨーロッパの貴族や富裕層の間で流行した「シノワズリ」から強いインスピレーションを受け、彼女のサロンはコロマンデルスクリーン(中国の黒漆し屏風)とクラシカル・チャイニーズ・ラグを西洋家具と組み合わせたスタイルとし、後のインテリアシーンに大きな影響を与えました。

そのようなクラシカル・チャイニーズ・ラグと1987年に出会ったのがMUNI CARPETSオーナーの楠戸謙二氏。清朝の滅亡に伴い途絶えたクラシカル・チャイニーズ・ラグを、現代の生活に蘇らせたいという強い想いから、1989年にMUNI CARPETS設立。現地のパートナー張力新にも出会い、400年前の絨毯を蘇らせるためクラシカル・チャイニーズ・ラグの蒐集(しゅうしゅう)の他、世界の美術館に協力を求め実物をサンプリングし、書籍や文献を頼りに資料を集める等、まさにゼロからのスタート。手紡ぎ技術や天然染料の研究にも力を注ぎ、シルクロードの甘粛省(かんしゅくしょう)に工房「漢氈居(かんせんきょ)」を築きました。この地はかつてクラシカル・チャイニーズ・ラグの産地であり、黄河上流の豊かな自然で育まれた上質な羊毛、そして天然染料の発色に大きく影響する祁連(きれん)山脈からの雪解け水が存在します。この歴史的な聖地で製作することは本来の姿を表現する上で欠かすことの出来ない大切なこだわりということがわかります。

さらにMUNI CARPETSはただ当時の絨毯を蘇らせるだけでなく、文頭でもお伝えしたように再構築されたもの。長年の研究によりクラシカル・チャイニーズ・ラグの美しさを熟知した上で、日本人の美意識を通して現代の生活文化にあったモダンな文様へとブラッシュアップ。用いられる文様は蓮や松、桃などの自然界の植物から、龍や麒麟など神話に登場する霊獣なども登場。その一つ一つには古から伝わる意味が込められています。

そのようなMUNI CARPETSが提案しているスタイリングもシノワズリを現代の生活様式に合わせて昇華させた“モダンシノワズリ”をキーワードとしています。“モダンシノワズリ”は西洋のモダニズムと東洋の豊かな精神性と美意識が融合したもの。80年代にピーター・マリノが手がけたジョルジュ・アルマーニのミラノ自邸のエレガントなスタイリングは、今なお多くのインテリアデザイナーをインスパイアし続けており、現在も欧米の著名なインテリアデザイナーによってそのラグジュアリーな “モダンシノワズリ” スタイルは受け継がれています。

東洋で生まれた幻の絨毯は長い歴史を経てMUNI CARPETSへ確かに継承されました。伝統に敬意を払い、美しさと品質に磨きをかけたラグは私たちの住まいに唯一無二の華やかさと心地良さをもたらしてくれるでしょう。

掲載画像はココ・シャネルが自身のサロンで寛ぐ様子(クラッチマガジン掲載)。

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テキスト 萱野


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JOURNAL ON 2th APR 2022

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