SOLD OUTArchives

デンマークが世界に誇るデザイナー、アルネ・ヤコブセンによるグランプリチェア。ミラノで開かれた展覧会でグランプリに輝いたことから、そのまま愛称として親しまれている。世界で500万脚以上をセールスするセブンチェアと同じ、座と背が一体になったプライウッドシート。それはアントチェアも同様なのだが、これらの2脚との最も大きな違いはフルウッドの脚。スチールレッグにはない重厚な印象となり、エッジの効いたフォルムが座面の下からしなやかにカーブしてゆく様は見惚れる美しさ。ヤコブセンの柔軟な発想はさることながら、木工でここまで繊細な構造を実現させたチャレンジを恐れない職人たちの努力にも目を向ける必要があるだろう。

脚はアアルトのスツールにならって、強度を確保するために薄く裂いた板を何枚も重ね合わせ、しなやかなカーブを描いた角棒がベースになっているようだ。その証拠に座面との接合部分は角棒の状態。このままでは太く野暮ったい印象となるため、角棒の角を削り落とす。この際、最も負荷のかかる外側の一角を残し削りとることで、ご覧の変形的な六角形の脚となる。すると、脚に陰影がうまれ、繊細さが表現された。さらに脚先に向かうにつれ僅かに細くする念の入れよう。やや華奢に見えるが、座面との接合部分は削らずに設置面積を確保しているためだろう、腰かけたときの安定感は申し分ない。

プライウッドシートはお尻や背中の形を考慮したカーブが付けられ、腰を降ろすと、スッとポジションが定まる感じがある。座ると気づくのだが、セブンチェアやアントチェアよりもシートが若干大きくゆとりのある座り心地。あれよこれよと姿勢を変えるわけではないが、椅子として寛容さを感じることで得られる安心感は大切なように思う。さらに省スペースで収納できるよう、スタッキング(椅子を重ねること)が可能。プライウッドならではの軽量性を活かした機能だ。ウッドレッグだから下になった座面に傷がつきにくいメリットもある。そして、独特の背もたれの形状は脚の造形とリンクしている。椅子をひっくり返して脚裏を見れば「あぁなるほど」とすぐに腑に落ちた。現行品ではスチールレッグも製作されているが、この椅子はフルウッドでこそ意味を成すデザインなのでしょう。

廃盤となり、近年までヴィンテージでしか購入できなかったフルウッド仕様も今では復刻され、新たにオーダーすることも可能(¥78,000〜)但し、こちらは現行ラインナップにはないチーク材仕様。ヴィンテージならではの深みはまさに王者の風格です。


コメント:中島


2000年のオープン以来、「物質の循環」「自然との共生」をメインテーマに、ヴィンテージ家具の永続的使用を追求し続けています。末長くお使いいただけますよう自社プロスタッフが可能な限りのメンテナンスを施しました。ご検討、ご購入前に下記を一読していただけますようお願いします。

木部補修  生地張替  サポート  木材種類  無断転載について

Chair
160625-0002
W470 D520 H780 SH430
Arne Jacobsen / Fritz Hansen / Denmark / 1957 / Teak wood
SOLD OUT