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ハンス・ウェグナーによるAPストーレン製のイージーチェア「ベアチェア」。1950年からウェグナーとAPストーレンは協力関係にあったが中でも最も古い時期にデザインされた椅子の一つ。ウェグナーはデザインの依頼があったファクトリーの体質に適したデザインを心がけていた。APストーレンは生地張りを得意としていたからこそ、木フレームだけでは表しきれない複雑な曲線美と量感を表現した安楽椅子を設計したのでしょう。

ここでいくつかの逸話をご紹介したい。現在ではAPストーレンが廃業しライセンスを引継いだPPモブラー。今でこそデンマークを代表する名ファクトリーに成長したが、当時はAPストーレンの下請け(木部製造)を担っていた。ウェグナーはPPモブラーへ出向き、ベアチェアの木フレーム製作していた職人らに「生地で隠れて見えないところなのだから・・・」ともっと効率的に製作するよう促したところ、工場長アイナー・ラーセンのプライドに火をつけ大喧嘩。このやり取りがきっかけで両者の関係が深まったそう。

もう一つの話を。PPモブラーがベアチェア製作を引き継いだはいいが生地張りの工程はかなり苦労した。そこでヤコブセンのエッグチェアを手掛けていた優秀な生地張り職人2名を迎え、体制を整えたそう。彼女ら曰く「エッグチェア5台分の時間をかけて、ベアチェアはやっと1台仕上がる」と。職人冥利に尽きるのか、職人泣かせなのかは本人にしか分からない。むろん前者であることを信じたいが、1台ずつ手間暇をかけて丁寧に手作業される特別な椅子であることがよく分かる。

前置きがながくなりました、座り心地を試してみましょう。「熊が手を広げているようだ」と形容される太いアームは両手をついて負荷をかけてもビクともしない安定感。腰を降ろしてみると、まるで大木に体を預けたようなドッシリ感は他の椅子とは明らかに違う。背中には馬毛やパームなどの天然素材を使用し、反発力を抑えたしっかりめのセッティングは、ゆとりあるサイズパフォーマンスを活かすための最良の選択。大きな座面の上で胡坐(あぐら)をかいたり、両サイドのウイングに頭を預け、アームの上や下から足を伸ばすような斜め座りも心地いい。まさに安楽椅子の極みというべき椅子。

クッション張地、座面ウレタンフォームは国内にて新たに交換済み。背もたれ中材の天然素材は一度取り出し、ほぐしてから天日干すことで弾力を蘇らせ再利用している。また、張地にはコットンとリネンの混紡生地をセレクト。リネンの様な軽やかな風合いと天然繊維の素材感がオーク材のネイルや脚と馴染みがいい。その一方できめ細やかな紡績とコットンによる僅かな起毛感は清潔感やモダンさが感じられますから、現代的なコーディネートにも違和感なく取り入れることができるでしょう。背中のボタン締めはオリジナルに従い再現。大きな背もたれに陰影をもたらし立体感を表現するとともに、背を預けたときのホールド感も高められている。


コメント:中島


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Hans J Wegner / AP Stolen / Denmark / 1951 / Oak wood
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