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JOURNAL / FROM HIKE / ABOUT KAARE KLINT HISTORY



コーア・クリントという人物をご存知だろうか。デンマークモダンデザインの父と称されるデザイナーで、1900年代の初め頃に活躍。その功績は個人のデザイン活動に留まらず、後進の育成にも力を注いだことが大きいだろう。デンマークデザイン史を語る上で欠かすことのできない程にその存在は大きい。

1888年にデンマーク東部のシェラン島フレデリックスボルに誕生。父は建築家で、グルントヴィークス教会という美しい教会を設計したことでも知られている。因みにこの教会にはコーア・クリントの椅子が沢山並んでいるので、デンマークを訪れた際はぜひ足を運んでいただきたい。

1900年代初頭といえば大きくて機能的でない家具が多く存在する一方で、デン マーク都市部ではコンパクトな間取りの住宅が多く存在していたと聞きますから、デザインという考え方はまだ乏しいことが窺い知れる。そんな中、クリントは機能や衣装について非常に成熟した考えの持ち主だった。建築家の父の影響も大きかったのでしょう。デザインが身近に感じられ、少年の頃より家具職人、建築家としての修行を積んでいった。

そして、1924年にデンマーク王立芸術アカデミーの家具科を創設。教鞭を執るようになる。クリントは奇抜さは好まず、伝統的な家具を見直しそれを現代の需要に会うように再構築する「リ・デザイン」を提唱。「古代は我々よりももっともモダンである」という思慮深い言葉を残している。生徒にはハンス・ウェグナーやボーエ・モーエンセン、ポール・ケアホルムなど、まだ名前を挙げきれない有名なデザイナーが多く在籍。ミッドセンチュリー期に輝かしく活躍した錚々たる面々。

彼らはクリントの思想を確かに受け継いでおり、例えばハンス・ウェグナーの初期作品チャイナチェアは、その名の通り17、18世紀の中国にインスピレーションを受けてデザインされている。さらに、この椅子を自己模倣に陥らずに昇華を続けた結果がYチェアと言われているのは有名な話。

クリントは家具がどんな空間に置かれるのか、どんな体格の人が、どんな使い方をするのかなど、使う人や空間を想定した設計を大切にしていたそう。この考え方は「人のためのデザイン」と賞賛された。ボーエ・モーエンセンが卒業後、膨大な数の生活用品をサンプリングし、より収納効率のよい収納家具の設計しており、クリントの思想は人間工学の原点と言えるでしょう。これは世界中のデザイナーにとって現代でも重視されている。

そして、クリントは空間における家具のあり方として、家具は空間を支配するものではなく、機能とフォルムを通して調和するものと考えていた。私はかねてより北欧家具は派手さよりも機能や木の美しさが際立っていると感じていたが、この言葉を聞いたとき妙に納得感が得られたのをよく覚えている。クリントの思いは確かに受け継がれており、現代でもデザインの根幹となっていることは本当に凄いこと。

自身のデザインとしてはルド・ラスムッセン社のレッド・チェアやフォーボーチェアが有名。あとはプリーツ状のランプシェードが象徴的なレ・クリント社を創設した。それらの作品やファクトリーは現代も存在し、優秀なデザイナーであり、経営者でもあったことも窺い知れる。


文中に登場したクリントやウェグナー、モーエンセンの家具を一部ピックアップいたしました。


Kaare Klint(コーア・クリント)

Easy Chair Safari Chair
Pendant Lamp 130A
Table Lamp 311W


Hans J Wegner(ハンス・J・ウェグナー)

Arm Chair China Chair
Arm Chair CH24
Sofa GE270
Sofa GE290
Sofa GE530
Table AT309


Borge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)

Cabinet
Easy Chair
Easy Chair 2204
Easy Chair Spanish Chair
Chair J39


記者:中島


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FROM HIKE

JOURNAL ON 30TH MARCH 2020

ABOUT KAARE KLINT HISTORY