Niels Otto Mollerによるローボード。モラーは1944年にデンマーク、オーフスに自身の家具工房J.L.Mollerを設立。職人でありながら、同社のデザイナーとしても活躍し、社長としてビジネスの手腕もふるった。一生愛用できる椅子の宝庫と賞賛されるクオリティの高さが認められ、1952年にはドイツ、アメリカへ、そして現在ではヨーロッパ各国や日本など世界で親しまれている。美しい造形のチェアに定評のあるモラーだが、キャビネットはいかがなものか。確かめていきましょう。
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Niels Otto Mollerによるローボード。モラーは1944年にデンマーク、オーフスに自身の家具工房J.L.Mollerを設立。職人でありながら、同社のデザイナーとしても活躍し、社長としてビジネスの手腕もふるった。一生愛用できる椅子の宝庫と賞賛されるクオリティの高さが認められ、1952年にはドイツ、アメリカへ、そして現在ではヨーロッパ各国や日本など世界で親しまれている。美しい造形のチェアに定評のあるモラーだが、キャビネットはいかがなものか。確かめていきましょう。
まず、2枚の引戸のみで潔く構成されたフロントフェイスに注目したい。多くのキャビネットは引戸だけでなく引出しもレイアウトされるが、どうして?そのまま観察を続けると、その理由はすぐに分かった。ローズウッドの木目がセンターを境にシンメトリーにレイアウトされている。一見して感じられる力強い存在感の秘密はこれだったのだ。意匠の最も重要なところになるため、ローズウッドの美しい木目を吟味して贅沢に使用し、そして、その木目をしっかりと表現するべく要素を限りなく抑えた2枚の引戸のみにしたということ。
天板の四方は僅かに立ち上がっており、ローズウッドの量感を感じられる。機能的には物が転がり落ちない為の筆返しの役割も果たすだろう。今度は脚元に目を移すと、このキャビネットには幕板がなく、本体から4本の脚のみがセットされている。耐久力は大丈夫か、と心配になるところだがご安心を。幕板が備わっていない分、本体の底板が天板や側板と比べて倍近い厚みになっている。ここでも要素を抑える工夫が垣間見えた。テーパーがかけられた丸脚は有機的な木目との相性が良く、キャビネットに繊細な印象をもたらしてくれている。
隅に控えめに付けられた手掛けに指を掛けスライドさせるとスムーズに扉は動作。内部を覗くと驚き。なんと、棚板から内壁に至るまで全てローズウッドで仕上げられている。扉で隠れていて、物を入れたら見えない内部は素材コストを抑えて製作することが多いのだが、これなら扉を開けても外見の印象のまま内部にアクセスできる。モラーの木目に対する拘りの強さが伝わってくるところではないだろうか。
向って左に棚板が1枚。中央、2枚の扉に渡るスペースに棚板が2枚。いずれも可動式。そして、右側に4杯のトレーが備わっている。引出しの高さは収納するものに合わせて変更可能。そのまま引き抜いてデスクやテーブルの上に持ち出してもいい。ダイニングにレイアウトする場合にはトレーにカトラリー、グラス類を収納してもOK。トレーの位置を本体端にレイアウトしたことで、扉の開閉は必要最低限でアクセスできる。
こうして見てゆくとデザイナーの思慮深さに気付かされていく。熟慮されたデザインだからこそ、後世へと大切に受け継がれていくのでしょう。
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コメント : 中島
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