HIKE

冬場、日照時間が1〜2時間前後となる北欧。長く厳しい冬をどのようにして心地よく暮らすのか、家具デザインをする上で重要なテーマのひとつであろう。本作はHans J Wegnerによるデザイン、今はなきデンマークの家具メーカーAndreas Tuck社から1950年に発表されたソーイングテーブルAT33。北欧では古くから羊が飼われており、スウェーデンのゴットランド島、デンマークのフェロー諸島などは良質なウール産地とされる。また、土地ごとに伝統的な編み方もあることから、あたたかな服を編むことは冬を過ごす大切な北欧文化なのだろう。

正面の気になるツマミを引き出してみると内部は細かな仕切りやピンが備わっており、編物道具を機能的に収めておくことができる。日本の私たちにとってもお裁縫箱は馴染みがあり、この引出しがどんな役割をもっているかは容易に想像できるだろう。そして、AT33のアイコニックな要素である、大きなラタン性のバスケットには毛糸玉を収納。家具で用いるラタンと言えば、チェアの座面やソファテーブルの棚板など平面的なものが一般的なため、立体的なバスケットは非常にインパクトがある。

バタフライ式の拡張天板は両側を広げると幅1280mm。普段はコンパクトにまとめて生活スペースを確保しながら、作業時には編みかけの品を広げたり、編み図を並べたりと実用的な作業台に変化できる。全高が抑えられていることからリビングにレイアウトして、ソファやイージーチェアに腰かけながら作業していたのだろう。背面も美しく仕上がっているため、ソファの前にテーブルとして配置することも想定されているようだ。

天板裏には、Hans J Wegner、Andreas Tuckの刻印が残る。

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コメント： 中島

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