AP Stolen製のイージーチェア「AP19」。ある記者が「座っている人に熊が後ろから抱きついているようだ」と述べたことから今では"ベアチェア"の愛称で知られている。現在では、デンマークのファクトリーであるPP Moblerがライセンスを引き継いでいるが、こちらは1951年から1977年までの期間のみ製作されていたヴィンテージの一品。AP Stolenは1950年からハンス・ウェグナー作品を製作していたため、同社の最も古い時期にデザインされた椅子の一つだ。
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AP Stolen製のイージーチェア「AP19」。ある記者が「座っている人に熊が後ろから抱きついているようだ」と述べたことから今では"ベアチェア"の愛称で知られている。現在では、デンマークのファクトリーであるPP Moblerがライセンスを引き継いでいるが、こちらは1951年から1977年までの期間のみ製作されていたヴィンテージの一品。AP Stolenは1950年からハンス・ウェグナー作品を製作していたため、同社の最も古い時期にデザインされた椅子の一つだ。
ウェグナーはデザインの依頼があったら、そのファクトリーの体質に適したデザインを心がけていたそう。AP Stolenは椅子張りを得意とするからこそ、複雑な曲線美と、木フレームのみでは表しきれない量感を表現した安楽椅子を設計したのだろう。その技術力を裏付ける逸話がある。現在製作を行っているPP Moblerは張りの工程作業でかなり苦労した。そこでヤコブセンのエッグチェアを手掛けていた優秀な椅子張り職人の女性2人に声をかけベアチェアの張り仕事を担ってもらっているが、彼女ら曰く「エッグ5台分の時間をかけて、ベアはやっと1台仕上がる」とのこと。職人冥利に尽きるのか、職人泣かせなのかは張った本人にしか分からない。むろん前者であることを信じたいが、1台ずつ手間暇をかけて丁寧に手作業される特別な椅子であることがよく分かる。
座り心地を試してみよう。熊が手を広げているような太いアームに、手をついて全身で負荷をかけてもビクともしない安定感。勢いよくドスンッと座ってみるも、後方に伸びた脚のおかげで揺らぐことなく受け止めてくれる。座のクッションは勢いを瞬時に吸収し、お尻を包むようにホールド。座のクッション材にはウレタンフォームが使われている。対して背中には内包されたコイルスプリングを覆うように馬毛やパームなどの天然素材が層を成す。そのため、じっくりと体全体が包み込まれ、力みが解放されていく。この独特の座り心地を一度味わってしまうともう虜だ。また、ベアチェアは見た目に違わず、懐がとても深い。両サイドのウイングと、太いアームの角度、高さ、太さがすべて絶妙で、アームの上下に足を投げ出し、対角にあるウイングに頭を預けて斜め座りしたり、大きな座面の上で胡坐(あぐら)をかいたりと自由な姿勢が取れる。これなら1日の大半をこの椅子で過ごせるといっても大げさに感じない。
生涯で500脚以上の椅子を手掛けたウェグナーが晩年を過ごした施設に自ら持ち込み、最後の時まで共に過ごしたのがベアチェアだった。身も心も委ねられる一脚が住まいにあることで生まれる静かなひとときは暮らしに穏やかな余白を生み、歳月を重ねるほどにかけがえのない存在になっていくだろう。
オリジナルの生地のコンディションが良好なため、そのまま活かしています。質感はウールのような温もりがあり、ブルーグレーのカラーにより落ち着いた佇まい。ネイル(アームの先)と脚に用いられたオーク材は経年で深い色味に変化し、ヴィンテージならではの風合いを醸し出しています。
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コメント: 萱野
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